今回はプログラミング初心者が理解しておきたい「静的型付け」と「動的型付け」について解説します。
この記事では以下について説明します。
- プログラミングにおける「型」の基本概念
- 静的型付けと動的型付けの長所・短所
- 現代のプログラミング言語の動向
以下のような方に役立つ内容となっています。
- プログラミングを始めたばかりの方
- 静的型付け・動的型付けの概念を理解したい方
どちらも一長一短があり、適材適所で使い分けることが大切です!
プログラミングにおいて「型」とはなにか?
プログラミングにおける「型」とは、データの種類を表す概念です。例えば、数値、文字列、真偽値などがあります。
// C#の例
int number = 10; // 整数型
string name = "太郎"; // 文字列型
bool isActive = true; // 真偽値型
「型」があることで、コンピュータは適切な処理を行えます。例えば、数値同士の計算や文字列の結合など、データの種類に応じた操作が可能になります。
変数と型(C#)については以下の記事でも詳しく解説しています。

「型をいつ・どのようにチェックするか」が、静的型付けと動的型付けの違いなんです。
静的型付けと動的型付け
静的型付けと動的型付けとは?
静的型付け
静的型付けでは、プログラムを実行する前(コンパイル時)に型がチェックされます。型が合わないとコンパイルエラーとなり、プログラムは実行できません。
// C#(静的型付け)の例
int age = 25;
string name = "田中";
// コンパイル時エラー:異なる型の値を直接加算できない
int result = age + name; // エラー!intとstringは加算できない
型の間違いはプログラム実行前に発見できます。ただ、型宣言が必要な分、記述がやや冗長になります。
動的型付け
動的型付けでは、実行時に型がチェックされます。型のミスがあっても記述自体は簡潔ですが、エラーはプログラムを実際に動かすまで分かりません。
# Python(動的型付け)の例
age = 25
name = "田中"
result = age + name # 実行時エラー!intとstrは加算できない
型の間違いは実行してみないと分かりません。でも、型宣言が不要なので簡潔に書けます。
プログラミング言語の分類
主なプログラミング言語は以下のように分類できます。
- 静的型付け言語
- Java、C#、C/C++、TypeScript、Go
- 動的型付け言語
- Python、JavaScript、PHP、Ruby
長所・短所と適した場面
長所・短所を比較
それぞれの長所・短所を比較してみましょう。
観点 | 静的型付け | 動的型付け |
---|---|---|
(1)型エラーの発見タイミング | ◯コンパイル時 (早期発見) | △実行時 (遅れることがある) |
(2)統合開発環境の支援 | ◯充実 (自動補完・リファクタ等) | △やや弱い場合が多い (最近は改善傾向) |
(3)コード量 | △長くなりがち | ◯短く書ける |
(4)柔軟性 | △低い (型の縛りが強い) | ◯高い (型に縛られない) |
(5)初期学習コスト | △やや高い (型の知識が必要) | ◯低め |
言語の速度比較はこちらのベンチマークなどを参考にするとよいでしょう。動的型付け言語についても実行時最適化・一部C言語実装などにより高速に動作します。
静的型付けが適した場面
静的型付け言語は、プログラムを実行する前に型のチェックが行われるため、コードの安全性や信頼性を重視したい場面に向いています。
たとえば、金融システムや基幹業務システムなど、ミスやバグが重大なトラブルにつながる分野では、早い段階で型エラーを検出できる静的型付けのメリットが活きます。
また、チームで長期間にわたって開発・保守する大規模プロジェクトでも、明確な型情報による自動補完やリファクタ機能の恩恵が大きく、開発効率や品質の維持に役立ちます。
動的型付けが適した場面
一方、動的型付け言語は型を厳密に指定しなくてもよいため、素早く試作や実験を行いたい場面に適しています。
たとえば、プロトタイプ開発や一時的なスクリプト作成、アイデアをすぐに形にしたいときには、コードが簡潔で書きやすい動的型付けの柔軟性が役立ちます。
また、データ分析や機械学習など、手軽にコードを修正しながら試行錯誤したい分野でも、
動的型付けの手軽さが活かされています。
近年では、チームでの大規模開発にも動的型付け言語が使われることが増えています。
その場合、静的型付け機能の部分的な導入(後述)やテスト自動化などの工夫で品質を担保するケースも多いです。
どちらも使い分けが大事なんだね!
そうです!適材適所で選ぶのが重要です。最近は両方の良さを取り入れようとする動きもありますよ。
静的型付け・動的型付け言語の歩み寄り
現代のプログラミング言語では、静的型付けと動的型付けの長所を組み合わせようとする動きが見られます。
「動的型付け言語」へ「型チェック」機能を導入
「(1)型エラーの発見タイミング」や「(2)統合開発環境の支援」における動的型付け言語の弱みを補うため、プログラムを実行する前に型チェックする機能が導入されています。
JavaScriptとTypeScript
JavaScript(動的型付け)に型システムを追加したプログラミング言語「TypeScript」が登場しました。
// TypeScript(JavaScriptに型を追加)
let name: string = "太郎"; // 型を明示的に指定
let age: number = 25; // 型安全性を確保
Pythonの型ヒント
Python 3.5以降では、型ヒント(Type Hints)が導入されました。(型ヒントをつけるかどうかはあくまで任意です。)
# Python(型ヒント付き)
def greet(name: str) -> str:
return f"Hello, {name}!"
greet(1) #型エラーとして検出可能 (mypyなどの型チェッカーを使う)
TypeScriptやPythonの型ヒントによって、プログラムを実行する前に型チェックを行うことが可能になり、プログラムの誤りを早期発見できるようになります。
また、これらは動的型付け言語に対して段階的に静的型付けを導入できるようになっている点も特徴ですね。
特にTypeScriptは大きく成功を収め、広く普及していますね。
「静的型付け言語」における型推論
型を明示的に書かなくても、コンパイラが自動的に型を推論します。C#、Java、C++などで型推論が使えます。
// C#の型推論
var name = "太郎"; // 自動的にstring型として推論
var number = 10; // 自動的にint型として推論
// Javaの型推論
var name = "Hello"; // String型として推論
var list = new ArrayList<String>(); // ArrayList<String>型として推論
auto text = "hello"; // const char*型として推論
auto vec = std::vector<int>{1, 2, 3}; // std::vector<int>型として推論
型を書くのを省略しても、コンパイラが自動で型を判断してくれるってことだね!これで記述が少し簡潔になるね。
「静的型付け言語」へ「動的型付け言語」機能を導入
C#のdynamic型
C#では、動的型付けの柔軟性を取り入れるためdynamic
キーワードが導入されました。
// dynamic型の例
dynamic value = 10; // 最初は数値
value = "文字列"; // 後から文字列も代入できる
Console.WriteLine(value.Length); // 実行時に"文字列"のLengthを自動で呼び出せる
dynamic型は、「object型」と違い、代入した値に応じて実行時に自動で型を判断し、その型のメンバー(プロパティやメソッド)を使えます。
dynamic型は、型を気にせず柔軟にプログラムを書きたいときに便利ですね。
プログラミング初心者はどちらを選ぶべき?
プログラミング初心者が最初に学ぶべき言語として、動的型付け言語・静的型付け言語のどちらがよいのでしょうか?
私としては「どちらでも良い」かと思っています。作りたいアプリに適した言語を選ぶのがよいでしょう。
プログラミング学習では、作りたいアプリなど目的を明確にして、それを作りきるために勉強をしていく、というのが最も効率的です。詳しくは以下で解説しています。

ゲームを作りたければUnity+C#、機械学習アプリならPython…などと適したものを選ぶとよいです。
複数選択肢があって迷ったら、学習リソースが多そうなものを選べば良いでしょう。
もし、プログラミングに少し慣れてきたら、静的型付け・動的型付けの言語をそれぞれ1つずつ試してみるのはおすすめです。
これまで静的型付け言語(C#、Java)しか使ったことがなければ、JavaScriptやPythonを試してみる…って感じだね!
両者を知ることで、プログラミングを学習していくうえで、動的型付け言語・静的型付け言語それぞれの長所・短所を学ぶことができ、視野が広がるかと思います。
まとめ
本記事では、プログラミング初心者にとって重要な概念である「静的型付け」と「動的型付け」について学びました。
静的型付けと動的型付けには以下のような特徴と違いがあります。
- 型チェックのタイミング:静的型付けはコンパイル時、動的型付けは実行時に型をチェックするため、エラーの発見タイミングが異なる
- 開発効率と安全性のトレードオフ:静的型付けは安全性と開発支援機能に優れ、動的型付けは柔軟性と記述の簡潔さに優れる
- 適用場面の使い分け:大規模システムや信頼性重視の場面では静的型付け、プロトタイプ開発や試行錯誤が必要な場面では動的型付けが適している
現代のプログラミング言語では、TypeScriptやPythonの型ヒントのように、両者の長所を組み合わせる動きも見られます。
初心者の方は作りたいアプリに適した言語を選ぶのが最優先ですが、慣れてきたらそれぞれの特徴を理解するために両タイプの言語を体験してみることをおすすめします。
どちらも一長一短があり、適材適所で使い分けることが大切です!
引き続き、プログラミング学習を楽しく進めていきましょう。