2026年3月24日、Microsoft AI Tour Tokyo 2026が東京ビッグサイトで開催されました。今回は、現地で複数のセッションに参加してきました。

C#/.NETで日々開発する立場から、GitHub Copilotのエージェント化やSQL Server 2025のAI統合など、開発者ワークフローに直結するセッションを中心に現地レポートします。

この記事は2つの視点でお届けします。

【前半:Microsoftが目指す全体像】
「Becoming Frontier」を軸に、AIエージェント時代のMicrosoftの戦略と方向性を基調講演からまとめます。
→ Microsoft戦略・AI動向を把握したいすべてのエンジニアへ

【後半:C#/.NET開発者が押さえておきたい点】
GitHub CopilotのAgent Mode進化、SQL Server 2025のAI統合など、開発ワークフローに直結するセッション各論を紹介します。
→ 日々.NETで開発しているエンジニアへ

プロ太

普段Claude CodeやGitHub CopilotでC#を書いている開発者として、基調講演と3つのセッションに参加してきました。

特にGitHub Copilotのエージェント化は、日々の開発スタイルに直結する内容でした!

Microsoft AI Tour Tokyo 2026 全体像

Microsoft AI Tourとは?

Microsoft AI Tour は、MicrosoftがAIをテーマに世界各地で開催しているツアーイベントです。2026年は世界40都市以上で開催され、累計参加者数は10万人を超えています。

今回の東京開催では、基調講演(Keynote)のほかに、GitHub Copilot・データベース・AI基盤に関する複数のセッションが設けられました。

基調講演のアーカイブ動画は以下から視聴できます。

セッション一覧もこちらで確認できます。セッションによっては資料がダウンロードできるので、興味があるものについては見てみるとよいかと思います。

MS AI Tour Tokyo のセッション一覧を見ると、いくつかの大きな傾向が浮かび上がります。一言でいうと「AIエージェントの実装フェーズへ」です。

プロ太

97セッション中、体感で約半数が「エージェント(Agent)」というキーワードを含んでいますね。

2025年11月のIgnite 2025で示されたビジョンが、半年を経て具体的な実装・活用のフェーズに入ったことが明確に感じられます。

Ignite 2025については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。

Microsoft Ignite 2025 ざっくり理解|AIエージェント時代の全体像とC#/.NETエンジニアの注目ポイント【3つのIQ / Microsoft Foundry】 2025年11月18日~21日(米国時間)に、サンフランシスコでMicrosoft Ignite 2025が開催されました。 今...

セッションの傾向

セッションの主な傾向を整理してみます。

① AIエージェントの実装フェーズへ

Copilot Studio・Microsoft Foundry・マルチエージェント連携など、AIが自律的にタスクを計画・実行する「エージェント型AI」が全面に出ています。

Ignite 2025では概念とアーキテクチャの発表(参考)が中心でしたが、AI Tourでは「実際にどう作り、どう業務に組み込むか」にフォーカスが移っています。

② 3つのIQ(Work IQ・Foundry IQ・Fabric IQ)が動き出す

Ignite 2025で3つのインテリジェンスレイヤー参考)の概念が発表されました。

AI Tourではパートナー企業との連携デモ(Foundry IQ × Elastic、SCSKによるFabric IQ活用など)を通じて、この概念が実際に動く姿として紹介されています。

③ AI開発・データ基盤の統合(Foundry + Fabric)

モデル選定・デプロイ・ナレッジ基盤を担うMicrosoft Foundry参考)と、データ統合基盤のMicrosoft Fabricが、多くのセッションで一体的に語られています。

「Foundryでモデルを動かし、Fabricでデータを繋ぐ」という組み合わせが、AIアプリのフルスタック基盤として定着しつつあります。

④ エンタープライズ対応:業界事例とガバナンスがセット

金融・製造・流通・教育・行政と業界ごとの具体事例(第一生命、東芝、大和証券、NTTデータ、デンソーなど)が多数紹介されました。

Agent 365参考)によるガバナンス管理、Purviewによるデータ保護、Entra IDによるID管理など「守り」の面も充実し、現場適用と安全な運用が一体で語られています。

⑤ 開発者向け:GitHub Copilotのエージェント化

開発者向けでは、GitHub CopilotがAIエージェントへ進化し、コード移行・性能診断まで自律的にこなす姿が紹介されています。詳しくは後半のセッション各論で取り上げます。

プロ太

以降、基調講演と私がみたセッションをいくつかピックアップして紹介します!

基調講演:「Becoming Frontier」— フロンティア企業への進化

日経225企業におけるM365 Copilotの採用率は94%に達しており、2028年までに稼働予定のエージェント数は13億に上るという数字が示されました。

ここでいうフロンティア組織とは、AIと人間が協働することを前提に業務のしくみ全体を作り直した企業のことです。

基調講演では、Ignite2025のビジョンに基づき、MicrosoftのCopilotやIQスタックをはじめとする技術・サービス群によって、この変革をどう実現するかが示されました。

今回の基調講演の見どころは、架空の企業「Zava」を舞台にした一連のデモでした。デモにおける主要なポイントを紹介します。

①Copilot Coworkで複数タスクを同時並列指示

デモで使われたCopilot Cowork(現時点で限定の早期アクセスプログラム)の最大の特徴は、複数の指示を同時に投げかけられる点です。

右パネルのプログレスバーでAIが現在処理しているサブタスクの進捗をリアルタイムに確認でき、作業中でも追加の指示を入れられます。

以下はCopilot Cowokの画面です。右側に現在作業中のタスクと進行状況が示されていて、追加のタスク指示も可能です。(基調講演動画から引用)

②Excel・Word・PowerPointでのCopilot活用

ビジネスで使う主要ツールそれぞれでCopilotを活用するデモが続きました。

Excel

別ファイルのデータを自動取り込みや、機密ラベル付きファイルのデータを取り込むと、現ファイルの機密レベルが自動で引き上げられるといったデモが行われました。

以下はCopilotが様々なデータを参照し、自動で集計やそのグラフ表示を行っている様子です。(基調講演動画から引用)

Word

WorkIQが議事録・メール・Teamsのやり取りを横断的に参照し、文書の空白箇所を自動補完するデモが行われました。

PowerPoint

「このスライドのデザインを変えて」という指示だけで、以下のようにプレゼン資料のビジュアルを再構成するデモが行われました。(基調講演動画から引用)。

各ツールにCopilotが搭載されているだけでなく、WorkIQが業務コンテキスト(会議・メール・Teams)を横断的に収集します。

これにより、明示的に指示しなくてもAIが業務コンテキストを深く理解して、精度高く作業を進められる点がポイントです。

③Copilot StudioとGitHub Copilotも連携

市民開発者・開発者が使うツールにおけるCopilotのデモも行われました。

  • Copilot Studio:承認メールが届くと、Copilotがすでに関連調査資料を作成済みの状態で待機。
  • GitHub Copilot CLI:WorkIQにも接続し、Issueの起票から修正コードの実装・スクリーンショット取得まで一気通貫で自動化

④セキュリティとガバナンス

Microsoft Foundryのダッシュボードで「プロンプトインジェクション攻撃をリアルタイムでブロック」というアラートがでるデモも行われました。(基調講演動画から引用)。

AIエージェントの動きを常に監視・制御する仕組みが整っていること示していますね。

所感:個別技術よりも「トータルソリューション」が強み

Copilotは以下のツールそれぞれに搭載されています。

  • ビジネス・開発で誰もが使うMSツール(Excel・Word・PowerPoint)
  • 市民開発者ツール(Copilot Studio)
  • 開発者ツール(GitHub Copilot)

それぞれで、AIはインテリジェンスレイヤーを活用して業務コンテキストを取得して精度高く作業でき、かつそのAIの動きにガバナンスも効いています。

プロ美

個々の技術自体をみると、Copilot Coworkに近い機能はClaude Coworkとかあるよね。

でも、Excel・Word・PowerPointからGitHub Copilotまで一気通貫で、しかもガバナンスも効いているのが、Microsoftの強みだね!

プロ太

まさに、企業向けのAIトータルソリューションですね。

セッションのピックアップ

私が聴講したセッションについて、いくつかピックアップして紹介します。

(1)開発者ワークフローにおける AI エージェントとしての GitHub Copilot

Scott Hanselman氏(VP, Microsoft/GitHub)によるセッションは、AIに対する開発者の不安を歴史的な視点から解きほぐすところから始まりました。
(以下は講演時のスライドを撮影したもの)

コンパイラ登場時は「本物のプログラマーはアセンブリを書く」、IntelliSenseはのときは「脳を腐らせる」、Stack Overflowのときは「コピペ開発者を量産する」と言われました。

そして今、AIの登場で「コーディングの終わり」と言われていますが、毎回、このような同じようなパニックがあり、そのたびに開発者は適応して生き残ってきました。

以降、Hanselman氏の講演で印象に残った点をいくつか紹介します。

①Human in the loop:最終判断は常に人間が行う

Hanselman氏が一貫して強調したのは「Human in the loop」という姿勢です。

AIの登場でスキルが不要になるのではなく、スキルの焦点が「暗記・定型記述」から「判断力・センス・責任」へシフトするという話でした。

また、「バイブコーディング(雰囲気でコードを生成させること)はダメだ」と明言し、人が最終的にレビューし判断する必要性を説いていました。

プロ太

Hanselman氏が強調した「Human in the loop」は、最近の自分の開発スタイルとまさに一致します。

AIと議論しながらコードを書かせ、レビューして改善を指示するサイクルが中心になりつつあります。

「見た瞬間にわかるコードの嫌なにおい」という感覚こそがシニアとしての経験値であり、AIには代替できない部分だと実感しています。

②デモ:並列エージェントによるセキュリティレビュー

デモでは音声入力ツール「Handy」を使い、声でエージェントに指示を出す様子が披露されました。

プロ太

40年以上プログラミングをしてきた経験から手の負担を軽減するための工夫だと、笑いを交えて紹介されていました。

最も印象的だったのは、GitHub Copilot CLIを使い、Claude (Opus)とCodexの2エージェントに同時並列でセキュリティレビューを依頼するデモです。

両エージェントが同一のセキュリティバグを検出し(深刻度評価はOpusがHigh・CodexがMedium)、最終的な対応判断は人間が行うというフローが示されました。
(以下は、講演時のデモを撮影したものです。)

プロ太

Claude (Opus)とCodexの並列レビューは、普段の自分のC#開発でもすぐ取り入れたい手法ですね。

複数AIの指摘を比較して最終判断するスタイルは、特にセキュリティ面で安心感があります。

他にも、OSS管理サイト「Tiny Tool Town」の自動キュレーションのデモも披露されました。(以下は、講演時のデモを撮影したものです。)

AIが新規申請ツールを自動審査し、デモ中にサイトのツール数が247件 → 251件にリアルタイムで増えていく様子が確認できました。

③AIの限界:「正規分布の真ん中」問題

Hanselman氏は、自身が運営する2つのサイト(デモとして用意したもの)が「とても似た見た目」になっていると指摘し、AIの本質的な限界を語りました。
(以下は、講演時のデモを撮影したものを2つ並べたものです。)

AIの仕事は平均に回帰する。AIが作るものはIKEAの家具のようなもの。本当にデザインをよくしたいなら、プロに任せることになる。」とのことでした。

AIは「平均的に良いもの」を素早く作るのは得意ですが、突出したクリエイティビティや独自性は人間が加える必要があるということですね。

(2)Microsoft データベースの新機能: AI 駆動のアプリ開発を強化するには

「良質なAIにはクリーンなデータが必要」を出発点に、Microsoftのデータベースポートフォリオ全体にAI機能を組み込む方向性が示されたセッションです。

特に印象に残ったポイントを2つだけ紹介します。

①SQL Server 2025のAI直接統合

T-SQLからFoundryモデルをREST API経由で呼び出したり、ローカルに配置したAIモデル(ONNX形式)で推論を実行できるようになります。

アプリケーション層にコードを書かなくても、SQLクエリの延長でAI処理が可能になっています。

SQL Server+AIの機能強化(EF Coreにおけるベクトル対応)については、以下の記事でも解説しています。

.NET 10 LTS徹底解説!C# 14・Blazor・Aspire・AI統合・Visual Studio 2026まで【C#/.NET最新動向】 2025年11月11日(米国時間)に.NET 10、(そしてVisual Studio 2026)が正式リリースされました。 今...

②@mssqlエージェントによる自然言語クエリ生成

VS Code上で「延滞している未払い請求書のベンダーを検索して」と自然言語で指示すると、スキーマを理解したT-SQLが自動生成されるデモが披露されました。
(以下は、セッションの発表スライドのp36におけるデモ画像の一部です)

セッション(1)のGitHub Copilotと同じエージェント化の流れがDBツールにも波及しています。

(3)Foundry IQ × Elastic:多様なデータを活用した自律型AIの実装

このセッションはElasticsearch、Microsoftによる登壇でした。セッション冒頭に提示された問いが、全体を貫くテーマとなりました。

どうすればAIエージェントを、最高の社員と同じくらい信頼でき生産的にできるのか?」——答えは「同じ知識とコンテキストを授けること」。

特に印象に残ったのは、Elasticsearchパートで語られたコンテキストエンジニアリングの考え方です。

LLMは超ローコンテクスト文化の人間のようなもの」——この表現が印象的でした。

LLMは背景情報を一切持たないので、必要な情報を適切に渡す技術(コンテキストエンジニアリング)が重要になります。そのキーポイントは以下の4つです。

ポイント内容
選択ハイブリッド検索・リランキングで必要な情報だけを取得
書き込み処理内容を外部記憶にオフロードして作業メモリを軽く保つ
圧縮LLMで要約・古いメッセージをトリミングしてトークン数を削減
分離専門サブエージェントにタスクを分割・委任

セッションの結論として強調されたのは「高精度な検索が多くを解決する」という点です。

不適切なコンテキストは「Lost in the Middle」問題(重要な情報が長いコンテキストの中に埋もれてLLMが見落とす現象)を引き起こします。

コンテキストウィンドウがいくら巨大になっても、「とりあえず全部詰め込む」のではなく、必要な情報を選び抜いて渡すことが品質を決めるというメッセージですね。

「プロンプトエンジニアリング → RAG → コンテキストエンジニアリング」という進化の流れが明確に示されたセッションでした。

プロ太

Claude CodeやGitHub Copilotを使っていると、コンテキストに何を渡すかで出力品質が大きく変わることを日々実感しますね。

まとめ

Microsoft AI Tour Tokyo 2026は、「AIとどう付き合うか」を考えさせてくれるイベントでした。

では、C#/.NET開発者として、明日から具体的に何をするか——現地の空気を踏まえて整理します。

  • GitHub Copilot エージェントモードを実務に組み込む
    まずはローカルの小さなタスク(テスト生成・リファクタリング)から試し、「どこまで任せて、どこで手を戻すか」の感覚を掴む。
  • コンテキストエンジニアリングを意識する
    「プロンプトをうまく書く」から「エージェントに渡すコンテキストを設計する」へ発想を切り替える。
  • SQL Server 2025のAI統合をウォッチする
    DBレイヤーでのベクトル検索やAI直接統合は、既存の.NETアプリとの親和性が高い。実際に触ってみて、アーキテクチャの選択肢を広げておく。
  • 「Human in the loop」を設計に落とし込む
    AIが下書きし、人間がレビューする。この流れを開発プロセスに明示的に組み込むことが、品質とスピードを両立させる鍵になる。

AIエージェントをまだ使ってみたことがないという方は、GitHub CopilotのAIエージェントなど、まずはぜひ触ってみましょう。

Visual StudioでGitHub Copilotで「AIエージェント」入門!初心者向け解説【VS2022、VS2026】 AI活用編です。GitHub Copilotのエージェント(Agent)モードは、複数ファイルの横断修正やビルド・テスト実行まで自律的...
プロ太

引き続き、AIエージェント時代の開発スタイルを一緒に学びながら実践していきましょう!

ABOUT ME
プロ太
ソフトウェア開発を楽しく、効率的に行う方法を追求しています。 開発者の視点から技術的課題に向き合い、「純粋な技術的興味に基づく探求」と「実践的な課題解決」という二つの柱を両輪として活動しています。